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Vol.2
ルビーとサファイアの
意外と知らない関係性

[写真]ルビーとサファイア

宝石の中でも知名度の高いルビーとサファイア。

見た目には全く異なりますが、どちらも酸化アルミニウムの結晶からなる"コランダム"と呼ばれる同一の鉱物です。

仮に、レッドコランダム、ブルーコランダムのような名称であれば、何となく同じ宝石で色違いなのかな?と想像ができますが、

そもそも名前が全く違うために同じ鉱物とは考えにくいのもあまり知られていない理由の一つかもしれません。

赤色のものはルビー。赤色以外のものをサファイアと呼びます。

サファイアは青色のブルーサファイア以外をファンシーカラーサファイアと大枠で呼ぶこともあります。
通常はそれぞれのカラーに合わせてピンクであればピンクサファイア、グリーンであればグリーンサファイアと呼びます。

ではなぜ同一の鉱物で見た目が異なるかの理由は、それぞれに含有される不純物(元素)の存在があるからです。

不純物(元素)が少なく純粋に近いものは無色透明で、そこに不純物(元素)が含まれることによって様々な色が現れるのです。

ルビーは不純物(元素)としてクロムを含むことにより赤い色に見えます。
ブルーサファイアは酸化鉄と酸化チタンを含むことにより青い色に見えます。

また、それぞれの不純物(元素)の量によって明るさや鮮やかさなどの明度と彩度が異なります。

ルビーの色範囲はオレンジィレッド〜パープリッシュレッドで、重要なことは赤が主要色(地色)ということです。

この色範囲の基準から少しでも外れると、それは全てサファイアとなってしまうのです。

ですから前後が入れ替わりレデッシュパープルとなるとそれはルビーではなく、サファイアになるわけです。

特に境界線が難しいのはルビーとピンクサファイアです。

その理由は、ピンクファイアもルビーと同じくクロムを含有しているものがあるためです。

含有量の差でピンキッシュレッド(ルビー)なのかレディッシュピンク(ピンクサファイア)なのかが決まってくるのですが、その境界線はとても難しくプロの鑑定士でも見解に違いがでることがあります。

また、その僅かな差で宝石名が変わってしまうため、それによってお値段も大きく変わってくることは明白です。
ルビーとピンクサファイア、一般論としてどちらが高いかというと皆様もご存知の通りルビーです。

そのため、宝石が取引される市場でも、その石がルビーなのか、ピンクサファイアなのかと頭を悩ましながら、石と真剣に向き合うバイヤーの姿をたまに見かけます。

[写真]ルビー

では、なぜ赤いサファイアをレッドサファイアと呼ばないのか?という疑問がでてきます。

ルビーの語源はラテン語で「赤」を意味する「ルベウス」 (rubeus) です。
1800年以前はレッドスピネルもガーネットも赤い色の宝石を全てルビーと呼んでいました。

つまりは赤い石を全てルビーと呼んでいたわけです。

そもそもサファイアの語源も「青色」を意味するラテン語の「サフィルス(sapphirus)」、ギリシャ語の「サフィルス(sappheiros)」に由来するため、元は青なのです。
そのため、中世まではサファイアといえばラピス・ラズリのことを指していたそうです。

つまり元々の語源を探っていくと、昔々は鉱物分類関係なく見た目の色で全て一緒くたになっていた、ということです。

鉱物学が発達し、語源や由来から名称が決められた経緯がわかればレッドサファイアと呼ばない理由も頷けます。

元々は同じコランダム結晶として生まれ、その育つ環境で得た不純物(元素)の違いにより、赤色を「ルビー」、その他の色を「サファイア」と人は名づけました。

「クロムをいっぱい含んだ鮮明なルビーに成長してほしい。」
「ブルーをベースに少しバイオレットを含んだ魅惑的なサファイアに成長してほしい。」
「色ムラのない鮮やかなパパラチアカラーのサファイアに成長してほしい。」

そんな人の願いの及ばない自然の産物だからこそ、ルビー、サファイアが古くから人かから愛される由縁なのでしょうね。

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