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Vol.6
宝石鑑定士から見た
信頼できる鑑別機関

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はじめに、混同されやすい「鑑定書」と「鑑別書」の違いを説明したいと思います。
まず、それぞれの定義についてです。

鑑定書
ダイヤモンドのグレード(品質)を記載した証書のこと。
別名ダイヤモンド・グレーディング・レポートといい、4C(カラット・カラー・クラリティー・カット)に基づき
また、これはダイヤモンドのみにしか発行されません。
ソーティングメモ
持ち運びに便利な袋状になたもので、鑑定書と鑑別書のどちらのソーティングも存在します。
次にどこの鑑定書、及び鑑別書であれば信用できるのか、という問題が出てくると思います。
日本国内には「一般社団法人 宝石鑑別団体協議会(AGL)」(※以下AGL)という団体が存在し、約20前後の鑑別機関が登録されています。

鑑定書、鑑別書を発行するにあたり、AGLの基準を満たさなければこちらに加盟することはできません。
ですので、こちらに加盟している鑑別機関であれば信用できるといえます。

一方でAGLに加盟している鑑別機関が全て同程度の信頼性、信用力があるかと言いますと答えは否です。
加盟している中でも、得意分野が分かれていたり、持っている鑑別機材やサンプルストーンの違い、歴史や経験などに差があるためです。

また、私どもが考える信用できる鑑別機関に必要な3つの要素についてご説明いたします。

1)技術力(知識・経験・機材)
2)情報収集力
3)距離感

1)技術力

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多くのサンプルから検出された膨大なデータ、それを分析することができる知識、また解析する機材を揃えることができる資本力も必要です。
例えば、コランダムについて「通常、色の改善を目的とされた加熱が行われています。」というコメントが記載されている鑑別書があった場合についてみてみましょう。
技術力の高い鑑別機関の見解としては「一般的に加熱処理されていますが、この石は加熱されてない可能性があります。
加熱か否かについてはより高度が分析が必要になります。」という意味となります。
(※明確に加熱の痕跡があれば、「通常」をつけず「色の改善を目的とされた加熱が行われています。」というコメントになります。)
一方で技術力が高くない鑑別機関の場合「コランダムは一般的に加熱処理されていますので、この石も加熱されている可能性があります。」という意味となります。
つまり加熱か否かを判断する技術力があるかない次第で、記載されるコメントは同じでも意味が変わってしまうことがあるのです。

2)情報収集力

ICA(国際色石協会)、CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)といった世界の協会、学会から情報を得ることが出来るルートをもっているか。
世界的に信頼性の高い鑑別機関、例えばグベリンやSSEF(スイス ジェモロジカル インスティチュート)、GIAなどとの交流があり、最新の処理や産地についての情報を得ることができるか。
新しい処理が施された石などは最新の情報がなければ見解の誤った結果で表記されてしまう可能性があります。

3)距離感

依頼する側とされる側の距離感です。公平性、中立性とも言えます。
ダイヤモンドのグレーディングやカラーストーンの鑑別結果について、依頼する側にとって都合の良い結果出すような鑑別機関は信頼できる鑑別機関とは言えません。

本来、鑑別機関と宝石を販売する側はそれぞれ独立しており、その理由は鑑別機関と癒着し販売する側にとって都合の良い結果を出さないようにするためです。
また、ダイヤモンドのグレーディングは人が見て判断する部分も多いため、どうしてもブレがでます。それを一定にするための基準が必要になりました。
そういった理由からAGLという団体が結成された経緯もあります。

以上の観点から考え、当社では以下の3社を信頼性の高い鑑別機関と判断し鑑定、鑑別を依頼しております。

  • GIA東京ラボ(※本拠地が米国なのでAGLには非加盟です。)
  • 中央宝石研究所
  • ジェムリサーチジャパン

以上の内容を踏まえ、今後宝石、宝飾品を購入するにあたり、その商品に付属している鑑定書、鑑別書を確認しどこの鑑別機関が発行しているのか?
また国内の鑑別機関であればAGLに加盟いているところなのか、国外の鑑別機関であれば世界的に信用度が高い機関なのか否かということも抑えておく重要なポイントになるかと思います。

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