宝石をもっと楽しむWebマガジン 福岡宝石市場 Plus

Vol.8
宝石のご購入前に
知っておきたい
処理のはなし(後編)

[写真]宝石のご購入前に知っておきたい処理のはなし1

次に、エメラルドについて。

地中から掘り出されたエメラルドの原石は、内部の状態を観察するために通常ベビーオイルに浸します。エメラルドはキズが多いためオイルが石の内部に浸み込みます。

また、研磨後にエメラルドの表面に亀裂や内包物が出ている場合にも、オイルや天然樹脂を含浸させます。

そのため市場で流通するエメラルドの99%はオイルが含浸されているといわれています。

一方で、オイルや天然樹脂は液体なので安定性が低く、エメラルドを長く使っていると抜けて、エメラルドの亀裂や内包物が目立ってくるという問題があります。

そのため、より安定性が高い素材を含浸したいという願望があり、昨今ではオイルや天然樹脂ではなく合成樹脂を含浸する処理が海外で行われています。

また、エメラルドはコランダムのように加熱して色を改善する処理はできないため、色をよく見せるために表面をコーティング処理されたものも存在しますので注意が必要です。

[写真]宝石のご購入前に知っておきたい処理のはなし2

次に、宝石の処理が価値に及ぼす影響について。

宝石の価値を決める要因として「希少性」と「美しさ(品質)」という2つが重要です。

例えば、前述の通り市場に流通するエメラルドの99%が含浸処理されたものであれば、残りの1%である無処理のエメラルドのほうが希少性が高いため、必然的に無処理のほうが価値が高くなります。

しかし、希少性が高いとしても、美しさが伴わないのであれば、その価値はあまり高いものではありません。

仮に、同じサイズの2つのエメラルドがあり、100点満点中95点の含浸処理されたエメラルドと、60点の無処理エメラルドであれば、含浸処理されたエメラルドのほうが価値が高いといえます。

これはコランダム(ルビー、サファイア)についても同様で、処理されていない非加熱のコランダムのほうが希少性が高いのは間違いないことですが、美しいか否かが価値判断の前提になるのです。

また、処理の中でも価値に大きく影響するものがあります。

例えば、コランダムの処理として、拡散加熱処理については、人為的に外部から着色元素を加えることで色を変化させることで見た目の美しさは向上しますが、その価値は高くありません。

また、ゴールデンカラーの南洋真珠に施されることのある着色処理についても同様です。

今回取り上げた処理は、代表的なもので宝石処理の一部にしかすぎません。

また、今後も技術の進歩に伴い様々な処理が生み出されていくことが予想されます。

その中には鑑別機関での看破が難しい処理がでてくるかもしれません。そうなると処理されていない宝石の希少性が高くなるでしょう。

一方で「無処理の宝石」=「素晴らしい、価値が高い」というわけではなく、美しさとのバランスが大事になることを覚えておいていただければ幸いです。

そして大切なことは、宝石を購入する際にその宝石にどのような処理がされているのか、またその処理は一般的に行われているものなのか、使っていく上で注意が必要なことなどをしっかりと確認することです。

今回のはなしが皆様の素敵な宝石との出会いの一助になれば嬉しく思います。

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