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Vol.9
ガーネットの様々な色と
魅力のはなし

[写真]ガーネットの様々な色と魅力のはなし1

ガーネットの和名は石榴(ざくろ)石です。
和名の由来からか一般的に赤色系の石をイメージされますが、無色、黄色、褐色、緑、黒など赤色系以外の色も存在します。

カラーバリエーションと種類について説明いたします。

ガーネットはベースとなる化学組成は同じですが、置換可能な元素がありその違いで色や特性が異なります。

「ガーネット族」と呼ばれる所以はこういったことからです。

その中でもジュエリーとしてよく使用されているものはパイロープ、スペサルティン、グロッシュラー、デマントイドガーネットかと思います。

宝石の価値としては一般的に赤色系より緑色系のものが高くティファニーが発見して有名になったツァボライト(グリーングロッシュラーガーネット)やデマントイドガーネットの品質がよくサイズの大きなものは高値で取引されます。

特にデマントイドガーネットは希少性の高さから人気があり、特にアンティークではロシア産の小粒であざやかな黄緑色のファイアやディスパージョンが強いものが多いため珍重されています。
現在ではやや明るめの緑色系で大粒でファイアやディスパージョンの強いものがロシア以外のアフリカ地域でも産出されています。
また、デマントイドガーネットを除くガーネットは硬度が7〜7.5ですが、デマントイドガーネットは硬度が6.5〜7と低いためご使用時に傷やカケがつきやすいため取り扱いに注意が必要です。

赤色系のガーネットは産出量が多く品質のよいものでも安価で入手できることが魅力の一つです。
そのためアルマンディンガーネットやパイロープガーネットはシルバー素材のジュエリーなどにも使われることが多い宝石です。
一方で比較的大粒のものが取れるため、カラット数が上がればそれに応じて価格も上がるため全ての石が安価というわけではありません。

また、ガーネットでも変色するカラーチェンジタイプとアステリズムと呼ばれるスター効果をしめすものがあります。
カラーチェンジするタイプはアレキサンドライトほど鮮やかに変色するわけではありませんが、青から赤に変色します。
スター効果はスターサファイアの6条とは違い、4条のスターです。こちらはアルマンディンガーネットの70度110度交差の針状インクルージョンが起因します。

このように多様な種類があるガーネットですが、その魅力は何でしょうか?

まずは、無処理の石であるということが挙げられます。
ルビーやサファイアが一般的に加熱され、エメラルドは含浸処理されていますが、ガーネットは原石の状態から研磨しただけで人為的な処理が一切施されていない宝石です。
それにも関わらず、これだけのカラーバリエーションと美しさを持っていることは大きな魅力の一つだといえます。

また、デマントイドガーネットを除き、硬度も7以上と比較的高めでジュエリーとしての使用にもある程度耐えられる耐久性を持っていることもよい点でしょう。

[写真]ガーネットの様々な色と魅力のはなし2

一方でマイナス面としては、色が挙げられます。
ガーネットは単屈折性の石なので多色性がなく、赤色のガーネットは赤色一色のみしか視覚することができません。
一方で例としてルビーは複屈折性の石で多色性があります。
例えば赤紫と黄赤の多色性を持っているルビーを見ると、見た目にはガーネット同じように赤に見えるかもしれませんが、見る角度などを変えることで実際には赤紫と黄赤の両方の色が複合された赤を視覚しているのです。
つまり単純な赤ではなく紫系の赤と黄系の赤を1つの石から感じることで複雑な美しさを感じることができるわけです。

また、ガーネットは一般的に蛍光性がないので、室内でも屋外でも同じような色に見えますが、蛍光性のある石は紫外線に反応するため室内で見るのと屋外で太陽光に当てて見るのでは微妙に色合いが異なります。
その微妙な色の見え方の変化を人は石の魅力としてとらえるのです。このように色の多様性、おもしろさという点においては、ガーネットは他の宝石に比べて少し劣っているかもしれません。

今回は、ガーネットの様々な色と魅力のはなしというテーマを取り上げてみましたが、いかがでしたでしょうか。

ガーネットも実は赤色以外にも多様な色合いのものがあり、またカラーチェンジ、スター効果といったものがあることはご存知ない方もいらっしゃるかと思いますが、今回の話からガーネットに少しでも興味を持っていただけると嬉しく思います。

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