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Vol.10
真珠の種類と品質、
お手入れ方法のはなし

[写真]真珠の種類と品質、お手入れ方法のはなし1

真珠はダイヤモンドやルビーの無機質の宝石と違い、真珠とは一般的に貝から取れる有機質の宝石の一種とされています。

無機質の宝石は原石の状態では輝かず研磨することではじめて美しさを感じることができますが、真珠は生まれたままの状態で美しく、研磨技術などが確立する前から親しまれてきたものです。
そのため、その歴史は古く人類が初めて出会った宝石と言われています。

また、真珠には「天然」と「養殖」のものが存在します。

真珠を形成する真珠層の成分を分泌する外套膜が貝の体内に入り込むことで真珠層が形成され真珠が生み出されます。

この外套膜を人工的に挿入するのが「養殖真珠」です。
一方で貝殻の外から微細な異物が偶然に入り込みそれをもとに外套膜が真珠層を形成し生まれるのが「天然真珠」です。

現在は流通する真珠のほとんどは養殖で、貝殻で作ったボール状の「核」と呼ばれるものを人工的に挿入することで真珠を養殖しています。
ちなみに20世紀に入りその養殖技術を先駆けたのが「ミキモト」で知られる「御木本幸吉さん」です。

養殖する技術のない時代のものは天然の真珠です。アンティークジュエリーなどによく見られます。
現在でも稀に天然真珠が存在します。こちらは非常に稀少性が高いため珍重されます。

それでは真珠にはどのような種類があるのかをみていきましょう。

[写真]真珠の種類と品質、お手入れ方法のはなし2

よく知られているのは和珠といわれるアコヤ真珠、南洋珠と呼ばれる南洋真珠(白蝶・黒蝶)です。
また、最近人気のあるコンクパールや珍しいメロパール、アワビ真珠などは上記の二枚貝から採取されるものと違い巻貝のため真珠層を持たず個性的な外観特徴を持っています。

アコヤ真珠の大きさは5.0〜7.0mmが中心で9.0mmアップのものは養殖でも特に珍しく9.5mm〜10.0mmのものは大変希少なものとされています。
南洋真珠は主に白蝶と黒蝶と呼ばれる白と黒、それからその間のグレーカラーのものやゴールデンカラーが存在しサイズも9.0mmアップと大きなものが多いです。
黒蝶真珠は主にタヒチで養殖されています。

真珠は外套膜から形成される際に真珠層といわれるものが幾重にも形成され真珠独特のテリ、オリエントと呼ばれる干渉色を放ちます。
こちらの層が厚ければ厚いほど美しく良しとされています。

[写真]真珠の種類と品質、お手入れ方法のはなし3

良い真珠を選ぶためのポイントは、

ある程度の巻が厚く(0.3mm以上)、表面がなめらかでキズがなく、綺麗な干渉色が美しく、自分の顔が映りこむくらい光沢の良い真珠が品質のよいものがと言えます。

形状は一般的には真円に近いほうが評価が高くなりますが、最近では個性的なバロックシェープなどの形状をあえて好む方も増えてきています。

次にアコヤ真珠についてお手入れ方法などをお伝えいたします。

アコヤ真珠は日本では冠婚葬祭で必要なアイテムです。

前述で記載した通り鉱物とは異なるものであるため、取り扱いに注意が必要です。

有機質と記載しましたが、そもそも生き物から生み出された有機物なので浜上げされた時点から劣化は始まります。

巻きの厚いものであれば極端な経年劣化を感じることは少ないですが、巻きの薄い安価なネックレスですと経年劣化でホワイト系の色味がクリーム色に変化していたり、使用後の保管状態から真珠に白い粒々が発生したりすることもあります。

まず一ついえることはアコヤ真珠については、汗に弱いという性質を持っています。
ネックレスであれば肌に直接触れるため、汗や化粧品といったものが真珠層にダメージを与えてしまいます。そのため使用後は柔らかなガーゼのような布で丁寧に拭く必要があります。
販売店によっては真珠専用のクロスを購入時ケースに添えてあることもありますし、ジュエリーのお手入れセットとして真珠専用クロスも販売されています。

それでも元々は海に存在していた真珠ですので、丁寧に拭いていたとしても色の変化は否めないのです。
ある程度の湿度の保つ必要があるため、特殊なケースも販売されていました。

また、新しい方法としては、経年劣化してしまった真珠層の1層目を剥がし取るという方法があります。とても画期的だといえます。
真珠層の1枚はミクロン単位のため、1層を剥がしたところでサイズが目に見えて変わることはありません。
剥がすことで元の美しい光沢を取り戻すことができます。

冠婚葬祭がメインの真珠。
特に箪笥の中にしまったままで日の目を浴びることも少ないため、「久しぶりに出してみると色が変わっていた・・・」という話をよく耳にします。
真珠層を剥ぎ取る加工を行うには費用が必要にはなりますが、せっかく購入したジュエリーですから検討する価値はあるかと思います。

その他の日常的に注意が必要な点としましては以下の通りです。

  • 硬い宝石や貴金属と一緒に保管しない。
  • 炊事、洗濯、入浴時ははずす。
  • 果実や酢物を食べる際に汁がつかないように注意する。
  • ネックレスは身に着ける前や使用後に糸にゆるみがないか、糸が弱っていないかを確認する。

有機質の宝石である真珠は、ダイヤモンドなどの鉱物に比べて取り扱いに注意が必要なものですが、上記のようなお手入れ方法などをご参考に大切にお使いいただければ嬉しく思います。

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