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Vol.12
パライバトルマリンの
品質、価値、処理について

パライバトルマリンとは

[写真]パライバトルマリンとは

パライバトルマリンは1989年に産出された比較的新しい宝石です。
蛍光色、ネオンカラーと呼びますがこちらのブルー〜グリーンの色合いを持つトルマリンを最初に採掘された産地に因んでパライバトルマリンと呼びます。
その色合いはCu銅とMnマンガンに起因します。
パライバ州のあるブラジルの鉱山、2000年に入ってからモザンビーク、ナイジェリアから産出されています。

鑑別書にパライバトルマリンの表記をするためには成分分析が必要です。
以前はパライバトルマリンはエルバイトと呼ばれるもののみにしか適応されないとされておりましたが、2010年頃からはリディコタイトの場合もパライバ名称の適応が認められました。
この定義も物議をかもしておりました。
鉱物学を学んだ方々からするとエルバイトトルマリンとリディコタイトトルマリンは違うため、どちらもパライバと呼ぶのは納得できないと仰る方がいらっしゃいます。
新しい種類の宝石が取れることで時代と共に変化していくのが鑑別結果です。
大切なことは鑑別結果はあくまでも参考資料として最終的には自分の目で見て美しいと思える、魅力を感じる宝石を選ぶことが何より大事かと思います。

パライバトルマリンの品質と評価について

[写真]パライバトルマリンの処理について

パライバトルマリンも他の宝石と同じように、色・透明度・輝きの3要素で品質評価されます。
透明度と輝きについては、一様に良いほうが優れている要素ですので割愛して、ここではパライバトルマリンの色について考えてみます。
パライバは前述のようブルー〜グリーンカラーです。
そのブルーとグリーンの割合により実に様々な色合いを示しますが、一般的にブルーが強い色合いの方が評価が高くなります。
また、濃さ・明度・彩度についてはいずれも高い方が評価が高くなります。
この濃さ・明度・彩度が高いブルー〜グリーンカラーのパライバトルマリンはその蛍光色からネオンカラーと呼ばれています。

鑑別書では一般的に石の品質を知ることはできませんが、パライバトルマリンについてはその分析結果からいくつか分かることがあります。
その1つは、「色の濃さ」です。
成分分析表のCu銅とMnマンガンの値が高くなるほど色が濃くなる傾向にあるためです。
色については基本的には濃いほうが評価が高くなりますので、Cu銅とMnマンガンの値が高いほうが良い石の可能性が高くなります。
ただし、注意が必要なのは色の評価は濃さだけでなく、明度と彩度も重要ということです。
最高の濃さを持つ色合いだけど、明度がとても低く暗い石であれば魅力も半減ということです。
従いまして、分析報告書の値は品質評価の一助にはなっても、決定的なデータとしては使うことができないということです。

それから、パライバトルマリンは産地により品質が大きくことなる宝石の1つです。
具体的にはアフリカ産よりブラジル産のものが評価されます。
理由としては、前述の品質評価、特に色について評価の高い石がアフリカよりもブラジルから算出されるためです。
また、産出量が圧倒的にブラジルの方が少ないということから希少性の面でも違いがあります。

一方でサイズにおいてはアフリカ産のほうが比較的大きな石が産出されています。
またアフリカ産でもブラジル産に負けないよなネオンカラーを持つ石も産出されることがあります。
従いまして、どちらの産地が優れているかということは一概に言うことはできません。

パライバトルマリンの処理について

パライバトルマリンもルビーやサファイア、エメラルドと同じように処理が施されることがあります。
具体的には加熱処理、含浸処理が施されることがあります。
しかし、コランダムに比べて新しい宝石であることや、加熱の温度も比較的低いということからその分析は難しいことが多い現状です。
そのため、国内の鑑別機関では「通常、加熱されています。」という文言が記載されて、実際に加熱されているのか否かの分析は行っていません。
一方でGIAでは、明確に加熱の痕跡がない石には「加熱の痕跡なし」加熱の痕跡がある石には「加熱」というコメントが記載されますが、実際には「現時点では色の起源は判定不能」というコメントが記載されることが多くなっています。
つまり現時点の鑑別技術及び石のサンプルの範囲では加熱や照射処理がされているか否か、また人為的か自然界の中で生じたものなのかの判断ができないということになっています。

パライバトルマリンの類似石について

パライバが人気ですので良く似たカラーの石も登場しています。
以下のようなものもありますから、「パライバ」という単語に惑わされず、商品情報や購入店では確認を怠らないよう注意が必要です。

1)アパタイト
天然石です。硬度が低い石のため加工するには不向きですが華やかさがあります。
2)パライバ ベリル
合成ベリル
3)パライバ トパーズ
無色のトパーズにコーティングをしてもの
4)パライバ クォーツ
ロッククリスタルにコーティングしたもの
5)エリナイト
合成スピネル

これまでパライバトルマリンについて述べてまいりましたが、最後にパライバトルマリンを購入する前のポイントについて書きます。
ポイントとして言えることは「どのようなパライバが欲しいのか」ということです。
色、大きさ、希少性などの中からどこにポイントを置くか。
色は淡くてもよいので彩度が高く、サイズの大きな石が良いということであればブラジル産よりもアフリカ産の中からお選びいただくほうが良くなります。
小さくてもよいから濃い最高のネオンカラーの石をお探しであればブラジル産のものからお選びいただくことになるでしょう。
全てを兼ね備えたものはなかなかありません。
自分がどんなパライバトルマリンが欲しいのかを考えながらお選びになることをお奨めします。

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